ケシゴ100

手に持ったまま眠っていたスマホがピコピコと鳴っている
いつもの目覚ましかと思いきや

青ちゃんからのLINE

「14周セブンつきました」
「15周スタートまーす」

私は一言
「待ってます」

午前3時、2日目の深夜いつの間にか眠っていた
スタート地点通過の連絡が入りあと30分程でみんなが山頂へ上がって来る

100マイル160キロ完走をチャレンジしてる青ちゃんとペーサーの内川さん
応援ランの仲間が一緒に芥子山を今走っている

1周8キロのコースを20周で160キロ、山を20周もするのだからとんでもないトレランチャレンジの真っ最中

現在14周を終えたところなので計算したら112キロを超えてる
青ちゃんの今までの経験では110キロの大会へ出場して完走したのが最長記録なので
現在、己越えの15周目ということになる!頑張ってー

そんなこんなをメッセージ送ろうかと書きかけて、ふと考える
きっと彼の頭の中では、今までの色んな事を考えながら走っているだろうな
内川さんとそんな話をしながら走っているかもしれない、LINEでごちゃごちゃ書くのは止めておこう

私は山頂エイドテントの下、スマホをポケットにしまいシュラフの中から這い出て
1周目からのスタート時間が書き込まれているホワイトボードに15周目のスタート時間を書き込む

眠い頭を少しづつ起こし補給の準備
使用した紙コップは全部捨てよう
冷たいドリンクを飲むかな?
この時間はまだ寒い4月25日の深夜

温かい方がいいかなとジェットボイルでお湯を沸かし
食べそうな食べ物をテーブルに出しておく

おにぎり、カップスープ、ミカンやバナナの果物、グミやクッキー甘いお菓子、定番のチップスターのスナック菓子

走ってる人が何を食べるか考えても分からないサポート初めての初心者です
私のサポート参加は、整体の技を活かしてランナーさんの身体のケアサポートを申し出た

毎日、体調の悪いお客さんのケアを中心に仕事をしているけれど
ずっとしてみたかったアスリートの身体ケアを今回の青ちゃんのチャレンジに是非私もチャレンジしてみたかった

1周目からの経験で、すぐに出発するならエイド滞在は10分ほど、ゆっくり身体を休めるなら30分位は滞在する
その時間に食事をして、飲み物をしっかり飲み、マッサージをする
最初の10キロから、足の筋肉が固まる前にと毎周回腰からモモ、ふくらはぎの筋肉のマッサージを施し

少しでも疲労を溜めない事に集中してマッサージをしていたが、後半の80キロ越えて頃からは
足の筋肉はもうガチガチになり、ほぐしようがない位に疲労が溜まっていた
あちこち痛みも出ていると思われ、触ると痛みや筋肉の緊張がこちらにも伝わってくる

上半身の筋肉も登りでも下りでも使っているのでだんだん固まってきているようで
笑うとツリそうになるとの事でザックも下ろせずそのまま背中のマッサージをして
堅くなった筋肉をほぐして少しは復活できるようにと丁寧に触る事に集中

引っ張るとツリそうなので押さえて揺するだけ
手のひらを背中に当てると汗と熱い体温が手に集まり流れ込んでくる、これをほぐしまた身体に戻す
この繰り返しを何度も何度もしてるうちに体温が少し下がり筋肉が柔らかくなってくる

あまり長い時間座っていると今度は足の筋肉も冷えて固まってくるようで
2日目からは滞在時間は10分以内で、簡単な補給だけでコースの後半へ出発していた

さて、お湯が沸いて準備完了、そろそろライトを持ちテントの外へ出て待つ
しばらくするとチカチカとヘッデンの光が木々の間から見えみんなが帰って来た

「おかえりー!」

肌寒い朝の光の中
暑い真上からの太陽の下
冷えた空気の暗闇の中
毎周回青ちゃんと仲間達が清々しく帰って来る

初めてのサポートで何が出来るか、考えながら毎周学ぶばかり
ひとまず、誰もケガが無いのを確認してホッとする

エイドで補給をしつつ仲間と挨拶したり励ましの言葉を交わし、コースの後半をスタート
私はみんなの写真を撮り見送る
仲間がたくさん来てくれるのを覚える自信がなかったので写真に撮って全て時間まで記録

「行ってらっしゃい」

こんな時間を20回も見送り、43時間待っていたことになる

応援ランや差し入れ持参で応援に来てくれた仲間はトータル40名と犬一頭
Tシャツとマスクをオリジナルで3人に作ってくれた仲間まで
気になって応援メッセージ送ってくれた仲間やエイドで一緒に待ってくれた仲間もいて感謝の涙
いつも誰かが一緒に居てくれた記憶だった
最初の夜、エイドをみんなが出発したあと、ひとりになった時間がある

夜中の山頂エイド…大きなテントにはメインライトが1つ、手元にランタンが1つ、自分用のヘッデンが1つ
夜の風はいたずらばかりするから、あちこちから吹きテントの左からガサガサ、右からゴソゴソと吹きつけて音を出す

もちろん怖くて心細い…早くみんな上がって来ないかな!!
眠れもせずドキドキしていたら、青ちゃんからの電話でビクー!

何かあったのかな?ケガとか?おそるおそる電話に出ると意外にも元気な声の青ちゃん
「ナミさん羅針盤メンバーが来てくれたー!山頂の岩場まで出ておいでよ」
すごく嬉しそうな声にワクワクしてテントを出て岩場まで暗い山道をすすむ
一人で真夜中の山道は初めての体験に怖々歩いていると
チカチカとたくさんのライトが見えて、声がたくさん聞こえる!

「ナミさーん一人で待ってたのー?」シオさんの優しい声にホッとする
羅針盤のリーダーシオさんと、スタートにも駆け付けてくれてたシゲオさんに
ヤギちゃんもイッチーも一緒に応援に走ってくれてて、青ちゃんも内川さんも嬉しそうにテンション上がってる
みんなで写真撮ろう!みんなのライトを借りて集合写真もバッチリ
エイドテントに移動して、大騒ぎで楽しい時間になりさっきまでの寂しさは忘れてしまっているw

そして、また後半コースへみんなで出発
外国のレースや24時間耐久レースなどの経験者の多い羅針盤のみんなが一緒だから安心して見送る

「行ってらっしゃい!」
みんなが手を振って走って行く

いきなりのポツンと一人を実感…静かすぎ!一人は寂しすぎるー!
テントに戻り、また風のいたずらに驚きながら…ビクビクしながら…青ちゃんと内川さんの帰りを待つ

そこへ、一台の車が駐車場に止まった!しかも車から降りて誰かこっちに歩いてくる!!
おそるおそるテントの入口にライトを向けると男の人が手に大きな鍋を持って立っているではありませんか!!!
「アフロさん?」
「ナミちゃんひとりー?ゴハン食べたー?」
いつも明るいアフロさんが、炊き出しの準備を持って応援に来てくれた!

私がエイドに居るとは思ってなかったようで
「ひとりで待つかと思ったらひとりじゃなかった」
と喜んでくれたけど、こっちの方が何十倍も喜んでます!!!

テーブル出して、ガスコンロと調味料や紙コップなど手際よく準備して
缶チューハイを渡してくれて、のんべえ2人で待とうか~なんて準備がいいんでしょうかと感動してた

こんな、あんなことが毎周回ごとに繰り広げられる何とも賑やかなケシゴ100
誰も予想してなかった事が起こってる
言いだしっぺの青ちゃんでさえも予想してなかったとのちに語ってる

なんだか、おっきなファミリーを感じる

【あったかい】

毎回笑顔で帰って来る姿に安堵感
こんな時間をみんなで過ごせる事に涙が出る

そして、最後の青ちゃんからのLINEが鳴った
「19周目終了」
「今から20周スタートしまーす」

これが最後の
「待ってます」

「いまいくよー」

ってうれしい返信までおまけで付いて来た

元気に上がって来た二人はニコニコしてる
そんな姿を撮る
エイドには100マイラーのABO君が一緒に待ちうけてくれた
2人にスゴイなースゴイなーって絶賛の嵐でしかも、もう泣いてる
泣いてるABOくんをコラー!とまだ泣くなと叱る2人の姿にこっちはもらい泣き
2人も泣きそうなのをグッと我慢してる、なんとも良い友情に時間が和む

最後の20周目の後半は
青ちゃんと内川さん二人でゴールへ向かう

見送りもこれが最後か…とふりしぼって一言
「行ってらっしゃい」
涙が溢れながら二人の後ろ姿を見えなくなるまで見送った

ケガなく無事にゴールしてね
ゴールで待ってるよ

ゴール地点では青ちゃんへのメッセージ入りのゴールテープを用意
応援に来てくれた仲間に秘かに頼んで書いてもらったメッセージ
もちろん内川さんのも秘かに用意してたので
ゴールテープ2本で2人を迎える準備はできた
みんなあったかい言葉を寄せてくれてたありがとう
書く時間やタイミングが無かった仲間の気持ちもちゃんと入ってます!
私からの2人にささやかなプレゼント

もちろん2人は見事完走!
感動の男泣きで沈黙もカッコイイ姿でした

「このためだけに用意されたサングラス」
と恥ずかしそうにセリフを言う内川さんが印象的だった

43時間10分 162キロでチャレンジは終わりを無事に迎える事が出来ました
1人のチャレンジにこんなに沢山の仲間が応援ランに来てくれた事
仲間から力をもらって弱音を一度もはかず走りきった青ちゃん
ホントに素晴らしい2日間でした

そして、何よりこのチャレンジを有言実行した青ちゃんには尊敬とお礼を言います
本当にありがとうございましたカッコイイー!

スタートまでには、たくさんの想いと身体を作って我慢や積み重ねが色々あったと思います
少しずつ取材して青ちゃんの考えや想いをまた別の機会に書いてみたいと思います

そして、まだまだ書ききれないエイドでのあれこれw
43時間サポートとして迎える間に色んな出来事がありました
3人で大爆笑した事も忘れないように全部書いて残そうと思います

エイドでの出来事は次回のお楽しみ

結局私はと言うと、一番青ちゃんと過ごす事の少ない一人になってしまいましたが
誰より一番応援していたと思う内川さんにも負けない位に!

途中何度か「一緒に走りません?」って聞いてくれた青ちゃんと内川さん
悩んだけど、私の体力もそろそろ尽きそう…睡眠不足と気持ちが高まって何度も困ったことがあったのを

2人は知らない

仲間からのメッセージにうっかり返信し忘れてたり、ゴールテープに寄せ書き頼むのを忘れて呼び戻したり…
疲れて笑顔も途切れ途切れになる始末
睡眠不足が体力を奪うって事を体験していた

そんな私が走ってケガでもしたら…とか考えてこのチャレンジを台無しにしたくない想いと

思い出に一周でも半周でも一緒に走りたい気持ちと葛藤していたけど

私はサポートですから走らないで待つのが大切かなと諦める
もっと体力あったならなーと悔しくて悔しくて涙が出てきたりもした

けど!
やっぱり2人のゴールを見届けて思います
青ちゃんが無事にゴール出来たら全て良しです!

きっと2人にもそれぞれ自分の想いがあって、きっとスタートになる完走になってるな良い顔してる
こんな幸せな時間を共有できた私にも何か始まる気がした


ケシゴ100” に対して4件のコメントがあります。

  1. 青木ボンバイエ より:

    感無量。。。
    ただただナミさんには感謝しかないです。
    ほんとうにありがとうございました!
    ひとりの思いつきからはじまったアホなチャレンジが
    思いもよらない奇跡を起こしたこと、すべての時間が
    一生の宝物です。
    まずは延期になってる打ち上げで最高の乾杯したいです。
    これからもいろいろとよろしくお願いします!

    1. キヤマナミ より:

      青木ボンバイエさん
      いつも陰ながら応援してましたが、チャレンジをしてくださったお陰でオモテで堂々と応援出来ましたw
      ファーストチャレンジに共にいられた事は私の誇りに一生の宝物にします
      セカンドチャレンジの時には、呼んで下さい。
      何処にいても駆け付けますよ。

      このブログも続けられてるのもあなたのおかげですからね。
      感謝してます。

  2. うっちー より:

    なんなんだろう…。
    サポートしてあげるつもりで、
    ただ手伝いに行ったつもり…。

    そんな中で、
    僕の気持ちが大きく変化した二人。
    “青木君”と”ナミさん”。

    たった二日間で、
    友達から仲間に変わった。

    そこにあったものが何だったのか?

    無償で一人の友達を応援するのに、
    精一杯出来る事をする二人。

    なんなんだろう…。
    仲間って、いいな。と思うこの気持ち。

    1. ナミ より:

      うっちーさんコメントありがとうございます。

      仲間っていいな。
      って言葉にジーンとまたあの時の様に心が熱くてホワホワな気持ちになりました。
      素直な気持ちを書いてくれてる言葉が嬉しいです。

      無償で1人を応援する事で、うっちーさんとは深いところで想いが繋がったと思いました。

      ホントに不思議に力が出てきて
      出来ることをしたいと思える相手は仲間になるんだなーって思います。

      これからも、どうぞよろしくです!

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